AgileJapan2009 全体の感想

AgileJapan2009のオープニングは、実行委員長である平鍋さんより、イベントの趣旨についての説明で始まった。

Agileが根付いていない原因は「Agile」という言葉に対する誤解か、拒否感か。これまで、Agileというと、方法論、手法に目がいきがちだった。しかし、アジャイルの本質は、「人」へのフォーカスにある。本当のアジャイルの意義を、現場のエンジニアに限らず、マネージャ層や顧客とうまく共有するため、「アジャイルジャパン」という場を立ち上げた。

アジャイルジャパンでの仕掛け

欧米で行われるオープンソースのカンファレンスなどは、会場のいたるところで、熱い意見交換が行われているらしい。(モデルにしたAgile200xとか、Linuxカンファレンスなんかがそう。)
日本では、参加者はセッションの受講だけで終わってしまう事が多く、こういった場作りはほとんど行われない。同じ興味・同じ目的で参加している人が集まっているのに、良く考えるとすごくもったいない。AgileJapanが目指したのは、オープンなカンファレンスの良い部分を、日本でしか出来ないことも取り入れながら体験してもらい、今後の日本のソフトウェア業界全体を良くするきっかけを作ること。

今回のAgileJapan2009では、こんな「仕掛け」があった。

  • ペア割引
    • マネージャや顧客をうまく巻き込んでもらうために、ペア割引を導入。
    • 実際、会場で「ペア割引で参加した人は?」という質問に対して、1/3ぐらいの方が手をあげていました。
  • ランチは会場で、パンをかじって、ふりかえりや、短時間の発表(ライトニングトークス)を楽しむ。
    • オープンな雰囲気で、意見を交換する。
  • コミュニケーションセッション
    • 対話を重視した仕組みづくり。ひとつの会場で、6つの塊に別れてそれぞれのセッションを受講する。周りのセッションの様子もわかるので、参加者全員で、全体の雰囲気を共有できる。セッション間の移動も自由にできるので、ちょっとずつ覗いて回ることもできる。
  • 実行メンバーはスーツ,ビジネスカジュアルで。
    • これは、実行委員会内に流れたメールの項目である。一見、些細なことであるが、ビジネスも巻き込むという目的を果たすための、合理的な戦略になっていたのかも知れない。(※メールの内容は本当ですが、効果については私の勝手な解釈です。)


実際、コミュニケーションセッションでは200人のディスカッション全体が見渡せるので、非常にたくさんの情報や雰囲気が入り込んできた。ランチを食べながらのライトニングトークスの会場は、程よいリラックスムードを作っていた。この”仕掛け”は、AgileJapan実行委員会のみなさんの期待以上に機能していたように感じる。


驚くほど一致した、スピーカー達のメッセージ

 アジャイルは「人」だ!

私はイベント立ち上げの企画から検討に参加させてもらったのだが、今回のイベントで、決められたテーマはこれだけ。
それぞれのセッションのスピーカーのみなさんには、このテーマと、話してもらいたい事例や、スキル分野、タイトルといった内容をお願いしただけで、相互に話す内容は、細かくは調整されていない。
しかし、始まってみると、それぞれのセッションを担当したスピーカーのみなさんから伝わってくるメッセージは驚くほど一致していた。

  • ビジネス,チーム,個人。
    • それぞれで勝手に壁を作らず、人と人との相互作用を作り出し、力を引き出す。
    • 改善、変化は自分から。
    • そして、全員で「考えよ」

ということ。
開発者とマネージャ・経営者といった視点の違い、ソフトウェアと製造業の業種の差、言葉・アプローチは違っても、物事を良くするには、本質的な「人」の部分に関心が行き着く。
アジャイル」は、プロセスや技法ではない。ものづくり、チーム・ビジネスの在り方も含めた考え方であり、その構図の中心にある「人」が最も重要なキーワードと言える。

AgileJapanの可能性

このように、AgileJapanは、開発者に留まらず、上司・顧客も巻き込み、ビジネス全体を動かそうとするイベントである。
日本では前例を見ないこの取り組みは、今後の日本のものづくりの発展を担う、一つの転機と言い得る内容であった。