AgileJapan2009 The Role of Leadership

トヨタ生産方式の「徹底したムダの排除」「カイゼン」に学び、3M初のジャスト・イン・タイムのリーン生産システムを構築。「リーン開発の本質」「リーンソフトウェア開発」などの著者である、メアリー・ポッペンディークさんのお話。
メアリーさんが、会場に映された一枚のスライドを丁寧に説明した後、日本語版のスライドに切り替わり、平鍋さんが日本版を解説。メアリーさんのメッセージも直接感じ取れ、さらに、平鍋さんの明快な解説が付くという、非常に豪華なセッションです。

ソフトウェア開発に求められる新しいリーダーシップ

  • テーラーの「最高のやりかたはひとつ」に対する逆説
  • アレンの戦艦を作るための教育プログラム
    • 88000人を2年間で教育した人の言葉。
    • 「生徒が学ばないのは、先生が教えてないからだ。」
  • 職能トレーニングの4つのステップ
    • Preparation
    • Presentation
    • Application
    • and Testing
  • Training within industry
    • 企業内訓練
    • アレンの4段階アプローチを採用
      • 仕事の教え方、改善のしかた、人の扱い方がインストラクションに書かれている。この手引書は現在も使われている。
      • →日本に輸入されて経済再建のために使われている。
  • Job Instruction,Jpb Relations
    • この書籍は日本でもまだ販売されている。
    • 改善する技能、人を扱う技能
  • TWI Premise
    • 監督者の5つのスキル
      • 仕事の知識
      • 責任と役割についての知識
      • 教えるスキル
      • 手法を改善するスキル
      • リーダーとしてのスキル

日本のソフトウェアづくりも、リーダーとして、上記のことを心がけなければ破綻する。

  • 「標準」
    • 標準は時々刻々と変わる。ベストな状態は変わる。カイゼンあっての標準。
    • ベストなものを心がけると、標準というのはなかなかできん。あまりにベストなものを作ると、カイゼンのモチベーションは下がる。
    • 悪い標準を作るのもひとつの手かもしれない。
  • 「決められた」ものは守らない「決めた」ものはやる。
    • みんなで試行錯誤しながら標準をつくる。
    • 標準を紙の色がかわるまでぶら下げているやつは給料泥棒。
      • 標準に日付を入れて、常にカイゼンをみる。
  • エドワードデミングのSystem of Profound Knowledge
    • システム的な見方が基盤となる。決して、部分最適すべからず。
    • サプライや、顧客間の関係をマネジメントする。デミングは日本で評価され、後にアメリカで認められたケース。システム観をもったリーダーシップが必要。
  • 石川馨
    • マネジメントは、部下に自己の能力をフルに発揮できる環境を与えること。トップは権限を委譲する勇気を。
    • デミング、大野さんにも共通する。標準は変わらなければ、使われていない証拠。
    • トップダウンの標準は役に立たない。

リトマス試験紙

  • What are You Building?
    • 3人の石切工に質問「何をやってるのですか?」
      • 石を切ってる
      • 生計を立てている
      • 聖堂を作っている。

マネジメントの本質は、いかに最下層に意思を伝えるか。
仕事がうまくいかないときの状態を見ればすぐわかる。
リトマス試験紙と表現)

      • 文句を言うのは、石を切ってる人
      • 無視するのは、生計を立ててる人
      • 自分で治すのは、聖堂を作ってる人。

リーダーシップとは

「仕事の内容を理解していて、ファシリテーターとして振舞う」が、今求められているリーダーシップ。

  • リーダーシップの3つのモデル
    • 独裁者(ディレクター)型
    • エンパワーメントスタイル「あなたのやり方で」
    • LeanStypeリーンスタイル「ついてきて。一緒に考えよう」
  • トヨタにおけるリーダーの仕事
    • 先生としての役割
    • 一人一人の問題解決、仕事のカイゼンに指導
    • 一人ひとりの仕事が顧客の価値、会社の反映に価値提供するように、必ず整合させること。
  • ここで余談。(平鍋さん)

トヨタの方とのやりとりの紹介。
「TPSを一言で言うと?」というトヨタの方からの質問。
その方の答えは、「自分で考えろ」だという。
かんばんなどの見える化にせよ、どんな取り組みでも
自分で考えたのかどうかを重要視する。

  • Chief Engineer(トヨタのチーフエンジニア,昔は主査と呼ばれた、)
    • ビジネスの成功の責任
    • 顧客の深い理解
    • 製品コンセプト
    • 上位レベルのシステムデザイン
    • スケジュール
    • ★顧客の価値を理解し、日々のトレードオフを行う
    • エンジニアにその理解を伝達する。
    • 必要なときにトレードオフを調整する。
    • ★ビジョンを維持する。
  • ビジョンを維持すること(事例)

最初にシエナ(←欧州展開する車種)の大きさを、リーダーからエンジニアに最初に伝えたとき、途中で、「そんな大きな車いらないよ」とかの意見が生じた。
しかし、何度も説得して、ビジョンを維持し続け、結果、その車は成功した。
ビジョン維持すること。それが、チーフエンジニアの仕事。(メアリーは、「維持」を”defend”と表現していた。)

リーダーの役割

  • リーダーの役割
  • ×プロセスリーダー
  • ×プロジェクトリーダー

製品の責任を持つ人と、部署の育成ををする人の役割分担。チャンピオンと機能リーダーの役割

  • Process of People?
    • 張富士夫
      • ふつうの人々からすばらしい成果をあげるような、すばらしいシステムをマネジメントする。
    • デミング

我々が出会うほとんどの問題は、一般的に原因をひとつに特定できない。複数の影響の結果である。
問題の原因を一部の人のせいにして追究するのは逆効果。
悪い状況をさらに悪くする。

「Change the System」

  • TPSは何の略?

まとめ,補足コメント(平鍋さん)

  • このプレゼンはAgile2008でメアリーが発表したもの。
    • 標準は誰が決めるのか(大野耐一)のスライドを見て、Agile2008の会場で歓声があがった。
    • 欧米のソフトウェア開発は、日本のものづくりに学んでいる。
  • 良いもの作りたい、その場その場で大切なことを変えていく。
    • これは、Agileに限らず、根本的に大切なこと。この意識を共有することは、ソフトウェア開発でも大切。
    • AgileJapanでは、それを持ち帰ってもらうことが希望である。