人事異動

人事異動 (新潮新書)

人事異動 (新潮新書)


人事異動という言葉に、前向きな期待を抱く人はどれぐらいいるのだろうか。
どちらかというと、環境の変化に対する不安や、新しい仕事への心配事などが先行するケースのほうが多いように思う。本書の序章でも述べているが、「とりあえず」「形だけ」という判断基準での人事異動が横行しているのが、その原因として大きいのだろう。こうした、「考えない」人事異動は、組織に何の効果ももたらさないし、社員のやる気まで削がれてしまう。

しかし、人事異動は、組織成長の鍵を握る、重要な機会である。

人事異動は、社員に新しい経験や出会いをもたらし、考えるチャンスをダイレクトに与えてくれる絶好のツールだからだ。
(あとがきより)

本書は、人事異動の機会と効果を最大限に生かすことを考えるための道筋を示している。
そのフレームワークとして、ページを割いているのが、SECIプロセスの解説だ。
企業が生み出す製品やサービスは、「暗黙知」と「形式知」のスパイラル的な相互作用によって生み出される。
この知識想像のスパイラルをまわし、より大きなものへと発展させるには、場を作る必要がある。場は、人と人の対話により形作られる。この場作りを意識すれば、人事異動は非常に効果的なツールになりえる。
人事視点でみた、知識創造を考えるきっかけになった。

こうしたSECIプロセスの紹介のほかにも、コンピテンシーを用いた行動指標設定の例、成果主義の再定義など、「とりあえず型」の組織戦略から脱するためのヒントが挙げられています。

人事的な視点で一般的な話が書かれた本で、あまり面白い話は書いてないのだが、自分のキャリアを描いてみたり、ビジョンを形成する上ではヒントになりそうです。