”アジャイル”をもう一度考えてみよう。(XP祭り関西2010)

XP祭り関西2010に参加してきた。


講演も面白かったし、以前からずっとお会いしたいと思っていた方々ともイベント終了後もじっくりとお話することができ、とても充実した一日でした。ありがとうございました。


しかし、イベントの内容に関してふりかえると、途中からかなり頭の中がもやもやと曇ってきた。
もやもやすることは、自分の考えの及んでいなかった領域を発見したということでもあるので、これをきっかけにいろいろと考えてみたい。

まず、私はこうしたアジャイルの実践事例を共有する場に行くと、発表者が思わず使ってしまう「勇気」とか、「信頼」「覚悟」などの、時・場面・人によってぶれのある言葉は、何か他の言葉に置き換えられないのかなあといつも考えてしまう。時には「愛」とか言ってしまう人もいるが、正直ジンマシンが出るほど苦手だ。

たとえば、「勇気」という言葉。
この言葉を使ってしまう理由もよくわかる。
「うまくいった!なんだろうこの感覚は。そうか、これが勇気か!」
この言葉は、経験した人だからしっくりくる言葉のはずだ。
残念ながら、この感覚を経験したことが無い人には理解が及ばない。
だから、「勇気を持って踏み出しましょう」って言っても、一番動いて欲しい人は動かないし、説得力も無い。
ドメインの言葉で、その意識を考えるべきではないか。
発表者には、自身の感覚の表現ではなく、聞き手の行動・思考を促すためのできるだけ具体的な話をして欲しい。


アジャイルは、ビジネス視点でシステム開発を考える性質上、避けては通れない「人」の問題にフォーカスするため、特にこうした話になりがちだ。

特に最近は、前後の話やその発言をした場の雰囲気も知らず、youtubeustreamslideshareなどでその部分だけを切り出して見てしまう事も多いので、「勇気」とか「信頼」のような、ぶれのある単語はかなり慎重に使いたい。
言葉だけを切り出して見た人が、精神論であるとか、宗教っぽさ(マイナスイメージな意味での)を感じるといわれても、反論の余地が無いだろう。


今回のXP祭りのテーマは、『アジャイルマインドを育もう』だった。

顧客のビジネス価値の最大化を目指す開発を行うには、メンバー全員が、アジャイルな考え方でプロジェクトに望まなければならない。(言い換えると、ビジネス価値を引き上げるための開発ができているプロジェクトは、往々にしてアジャイルなプロジェクトになっている。)つまり、プロジェクトメンバー全員でアジャイルを心がけることができていれば、良い開発ができるはずである。『アジャイルマインド』を育めば、プロジェクト、顧客、会社、さらには、業界が良い方向に導かれる。
では、その過程はどうするのか。私の現場ではどうやって取り組めばいいのか、何を考えれば良いのか。または、何かヒントは。これを探求し、知ったことや考えたことを共有したい。
これが、私のイベントの期待であり、可能性だった。

しかし、今回のイベントの流れでは、そのまま文字で表しただけでは、おそらく参加者によって認識がまちまちであると思われる『アジャイルマインド』とは何か、その先にあるものは何か、について一切共有することなく、一方通行で話が進んだ。
このズレは、パネルディスカッションで表面化し、私の中でもやもや感として現れた。

上記の期待・可能性を示した通り、『アジャイルマインド』は大切だ。それに、それぞれの発表がいい話だっただけに、ちょっともったいなかったのかも、と思った。


今回の件でも再認識したのだが、アジャイルの重要性や効果を端的にアウトプットするのは難しい。
だからといって、安易に何かに例えたり(メタファーとか言って誤魔化されることが多いので、安易にそっちに逃げる。)しては、場合によっては余計に不正確に伝えてしまいかねない。
時間がかかって面倒なことかもしれないが、現場(職場)、場面によって、誇張することなく、確実に言葉を探して伝えるべきだ。

考える事。
こうしたもやもやを感じたら、考えて、少しでもいいので、正確に伝えることを積み重ねていかないといけない。


アジャイルについてもう一度考えよう。