ヒトラーの経済政策

ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151)

ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151)

当時のドイツは世界恐慌にさらされ、ハイパーインフレ状態に陥っていた。さらに第一次大戦後の巨額の賠償が重くのしかかり、それまで築いた財産は否定され、普通の経済活動さえままならない。ドイツ国民は出口の見えない経済状況だった。この破滅的な状況に国民に求められて現れた指導者がヒトラーである。

ヒトラーというと歴史的にも悪い意味で名前を残している代表格と言える。ユダヤ人に対する迫害、第二次世界大戦に導いた独裁者というイメージを持っている人がほとんどだろう。
しかし、ヒトラーは当時の国民からの圧倒的な支持を集めてドイツを率い、奇跡的とも言える復活を果たした指導者でもある。破滅的な経済状況にあった国を一時的にでも好景気といえる状況に復活させた手腕に関しては、分析の価値があるだろう。

ヒトラーの経済政策は決して圧力的な指導ではなく、国民の将来に対する不安を取り除き、消費を促進させるという、ごく当たり前な手法。実際に、当時のドイツの国民はドイツが戦線拡大をしてしまうまでは非常に良い時代だったと思っているそうだ。
必要なときに必要な財政出動をする。最適なタイミングで、最も合理的な方法でそれを行う。現在の日本ではそれが全く出来ていない。日本も経済的には当時のドイツに近い危機が訪れる可能性は十分にある。少なくとも今のままだと確実に破綻する。ナチスを習うわけには行かないが、決断力、合理性、効率性といった部分では、学ぶべき部分は多いはずだ。

新書向けなのか、局所的な経済的効果を必要以上に持ち上げているような印象を受けてしまうのに残念な気がしたが、本書が扱っているのは、私を含めた世間ではヒトラーナチス)の功罪のうち罪の部分に目が行ってしまって見えてなかった部分なのかもしれない。一歩引いて考える分には読みやすいし興味深い内容だったと思う。