アジャイル本のつくりかた


写真は平鍋さんと。


わかりやすいアジャイル開発の教科書が発売されました。
Amazonからの発送も始まり、本屋さんにも並べていただいているようです。

筆者それぞれ仕事が忙しい時期とも重なり苦労したことも多かったのですが、これまでアジャイル開発に一緒に取り組んだみなさんのご支援・ご協力もあり、ついに発売に至りました。

今回、この本の執筆のお話を頂いたのがAgileJapan2012の懇親会でした。
全国で700名の参加者を集めたAgileJapan2012。当日、大阪のメイン会場で参加いただいていたソフトバンククリエイティブの編集者である三津田さんとお会いしました。その場で三津田さんとは、これだけの参加者を集め、ソフトウェア開発者の関心を集めている「アジャイル」なのに、日本人向けの入門書が無いという共通の課題認識を持ち、執筆の依頼を受けたのがきっかけです。

こうした本を書くことになったきっかけや、共著者の前川さん、細谷さん、出版社のソフトバンククリエイティブの三津田さんと進めた本作りの裏話は、三津田さんがブログにまとめてくださっています。

正月が明け、ふとした疑問「「担当:三津田」と書かれたメール」について皆さんに聞いてみた。すると、私が知らないうちに、この本作りがチケット駆動開発になっていた(!)。
 打ち合わせで、「Backlog」や「チケット」という単語がよく飛び交うなぁと思いながら聞き流し、本のコンテンツや進行のことばかりに気を取られていた結果が、これであった。
 チケット管理システムのBacklogには編集が対応すべき文字・図版の直しや要望(つまり校正の指定=チケット)が山積みになっていた(最終的にはチケット数1000件オーバー)。
 これを見て一瞬青くなったが、西河さんが冷静に一言。

「チケットこなしているとタスクがどんどん減っていきますから、おもしろいですよ」

 この一言を聞き、私も知らずのうちにアジャイルなものづくりに巻き込まれてしまっていたことに、いまごろようやく気づいた。

アジャイル開発の教科書』の本作りにおいては、?、?、?がタイムボックスになり、イテレーション(繰り返し)されまくっていた。
 制作当初、私は編集者として、いままでのやり方では本ができそうにないという直感があったが、それにしても、こんなにまでアジャイルな本作りになるとは思ってもいなかった。
 一般的に、本としての整合性・一貫性を保つために、?、?、?の工程で大きな追加・修正・変更を入れるということはあまりない。それは言い換えれば、本作りにおける追加・修正・変更は「手戻り」と認識されていたからだ。
 しかしアジャイルなものづくりの考えに立脚し、追加・修正・変更を「価値を高める作業」と、発想を切り替えたらどうだろうか。
 意図的に発想を切り替えたわけではないが、3人のアジャイルな開発者と毎週のスカイプや奥の深いリアルミーティングを繰り返していくうちに、こちらが企画を依頼したと思っていたのもつかの間、すっかりこちらが巻き込まれてしまったわけだ。


ここでも紹介いただいたように、今回の本の執筆は日頃の開発の進め方にできるだけ近づけてやりました。
単にソフトウェア開発者である執筆メンバーがやりやすいという理由もありましたが、アジャイルの入門書として、読者のみなさまにアジャイルな考え方を身につけてもらうよう、本の価値をできるだけ引き出すように、最適化したらこのようになったと言えます。

これからの技術書については、このようなアプローチが最適なのかもしれません。


本書を読んでいただいたみなさまの中にも、特にエンジニアの方は、日々の開発で考えたこと、気づいたこと、まとめた情報に、価値をもつことが多くあります。そうした情報をアウトプットし続けることで、周りの人からの相談を受けたり、フィードバックがもらえます。結果、本などのメディアに発信する機会も訪れるはずです。
本というまとまった情報が増えることは日本の技術者にとっては良いことだと思います。
是非、情報発信にチャレンジしてみてください。

また、技術書がどのように企画されるのか、どのように作られるのか、本づくりの裏側を知ることで、より本書を楽しんでいただければ幸いです。

わかりやすいアジャイル開発の教科書

わかりやすいアジャイル開発の教科書