右翼と左翼

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

「左翼」「右翼」の語源を語るだけの、トリビア本にとどまらない。
「自由」と「平等」という思想の歴史的変遷から、解釈の仕方、日本的な右翼・左翼までが、ものすごくしっかり書かれた良書です。それでいてわかりやすい。この740円は価値がある。

「左翼」「右翼」の語源は、フランス革命時の「急進派」「王党派」の座席配置に由来する。革命当初の「王党派」が保守派のスタート地点、すなわち右翼の源流になっている。しかし、急進派、すなわち左翼は、より進んだ「自由・平等」の考え方が変遷するにつれて、後の右翼側にシフトしてきたりする。右・左の思想分類は、そのときの思想や、社会情勢によって解釈が異なってくる。
『より進んだ自由・平等とは何か。』
大きな指針とされてきた、マルクス主義が崩壊した現代においても、追い求められる永遠のテーマだろう。世界史には全然興味なかったんですが、右・左の思想的な観点でストーリを追っていけば、世界情勢が非常にわかりやすい。ものすごく勉強になりました。

考えさせられるのが、日本における「左翼」「右翼」。
ソ連を盟主とする共産主義社会の崩壊によって、
 進歩 − 反動
 左  − 右
という構図は完全に過去のものになった。
右・左の論点は、非常に短期的な視点や、狭い定義の「自由」になってしまっている。
特に、リベラリストとかの言論に、違和感を感じる。たとえば、近年、一部の知識人によって叫ばれる「右傾化」の懸念も、所詮観念のレベルに留まる。ワールドカップとかでたまーに盛り上がるのを捕まえて、ナショナリズム煽ってるとか言うが、これも自分の国を再確認する機会に寄りかかってるだけで、あれ観て思想の偏りを心配するほうがずれてる。歴史的経緯から左よりな知識人の多い日本で、自虐的左翼がマスコミ中心に騒がれて意識的に刷り込まれる事態も異常だ。「国家の品格」とか、「美しい国」とかが、ちょっと売れた(タイトルに共感した)のは、そういった偏った報道への反動だろう。より進んだ「自由」「平等」が見えない今、それらの懸念事項には何の実態も伴わない。
とにかく、今の「左」は右傾化とか当面の問題を騒ぐ以前に、理念に欠けるのである。その先に、魅力的で壮大な理想が伴わなければ、本当の改革にはならない。
って考える僕は右寄りなのかな?

久々に思想の視野が広がった。
現在、世界を抑圧する紛争、権威、宗教問題を超えた、次の千年紀を迎えるための新たな思想。より進んだ「自由」「平等」は何かを考える、良い機会になりました。