生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物学はどちらかというと苦手で、細胞ってなんだかプヨプヨしたものぐらいにしか考えてなかった。生態現象も最終的には原子のレベルで論じると物理的現象の一つであるわけだが、本書の論理的かつ叙情的でストーリー性に富んだ文章に触れることで、生物の壮大な世界が一気に頭の中に流れ込んでくる。

話は、タイトルにもなっている「生物と無生物のあいだ」という問題提起から始まる。我々が貝殻に生命を感じ、ただの石ころを無機質に感じるのは何故かという疑問を投げかけられる。この問いは感性に訴えかけるものなので、簡単に解を導けるものではない。しかし、それを考える上で基本になる生命の仕組みを理解していくにつれて、その謎に近づいていく感覚を得ることはできる。生物学の奥深さ・可能性に触れ、知的好奇心を引き出してくれた。

生物が生物たる所作には、自分でも想像し得ないほどの壮大な世界が広がる。

また、美しく叙情的な文章は、読み手を物語(もちろんノンフィクション)に引き込んでいく。いつの間にか文中の語り手(筆者)に感情移入してしまっている。学者が多大な失敗や知識を積み重ねる時間を越えて初めて得られる興奮や喜びの一部を分けてもらえてるような感覚。

すごくおもしろかった。
これもまた、もっと早く出会いたかったと思う本のひとつだ。