パラダイス鎖国

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

街を歩くときに何かに怯える必要はない。
日用品で足りないと思ったものはコンビニとかスーパーですぐに手に入る。食べ物もおいしい。
高速インターネット回線は当たり前のように使えるし、すごい便利なケータイを当たり前のように持ち歩いている。
私は決して富裕層では無いが、安心して快適に生活することができている。
日本の商品やサービスの質は高い方だと思うし、外国に比べて暮らしやすいと思っている。

かといってすごく満たされた状態かというと、そうでもない。
未来のことを考えると不安要素がいっぱいだ。拡大路線と効率化で得られた成長は陰りを見せ、かつて世界最高を誇った技術分野では世界市場での競争がより一層激しくなっている。特に日本発の技術が少なく、後追いになりがちなソフトウェア業界に身を置いている者として、そういった危機感はより強く感じている。高度成長を担保に築かれた社会保障制度の未来なんか、もう誰も期待していない。

この国では、「パラダイス感」と「閉塞感」が入り乱れた妙な感覚にとらわれている人はたくさんいるのでは無いかと思う。


本書は、そんな微妙な状況を、的確な分析と切れ味の良い言葉でまとめたもの。
タイトルなんか絶妙で、これ以上の表現は無いと思う。
また、後半ではそんな鎖国状態(閉塞感)から抜け出すための長期的な提案、すなわち、「開国への道しるべ」がしっかりと示されている。



私なりに引っかかった言葉をまとめてみる。

  • 鎖国時代の公式
    • 公式I:力でコストを下げる
    • 公式II:プレミアムをつけて高いマージンを得る
      • 日本人の得意な戦略だが、これからはこれだけでは行き詰る。
  • 果て無き生産性向上戦略
    • 日本の強み。今後も武器になるだろう。

豊富な国内市場と、ハングリーさを原動力に、効率化を武器にした拡大路線がパラダイス状態を作り上げてきた。次のステップに抜け出すには、やはりイノベーションを引き起こす土壌が必要である。イノベーションというと大掛かりなきもするが、だれもができる小さな改革の積み重ねこそが、日本人のやりかたであるというメッセージは、まさに開国への第一歩かもしれない。

私自身、この閉塞感から脱却するための明確な解を持っているわけではないが、迷ってるよりもとにかく勉強することで自信(安心感)を得ているような気もする。小さなイノベーションを積み重ねていってみよう。