不機嫌な職場

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

タイトルとだけ読むと、実力主義の歪とか、価値観の推移、コミュニケーション不全といった、最近よく聞くの職場の課題提起かな?と思ってしまいそうですが、分析と対策の展開が新鮮な本でした。社会学的な論理的分析を元に、どうすれば活気のある現場を作り出せるかを考えるための、新しい視点を与えてくれます。

まずは、職場の分析。役割構造、組織構造、インセンティブという3つの要素のフレームワークを元に、なぜ職場に活気が無いのか、コミュニケーションが円滑にできないのかを考える。そこから、改善の糸口として「交換」という概念を中心にすえて考えを進めていきます。インセンティブは「交換」によって成り立つが、その交換資源である「認知」が圧倒的に不足している。ネットの世界ではこの認知の交換だけでSNSは盛り上がり、優れたブログの数々が生まれ、Linuxまで動く。一方で、職場の中では自分の仕事以外はやりたくない、協力できないという現象を見ることが多い。

 現代は稀にみる認知飢餓社会である。

この表現にはやけに納得した。
現状を変えるには、まず「認める」ということ。そのための仕組みや場(きっかけ)を作っていくことが、不機嫌な職場を打破するための第一歩だろう。

あと、多くの職場で見られる最大の問題は、職場の関係がうまくいかないという悩みを個人の問題ととらえてしまうことである。
精神的にダウンしてしまった人をカウンセリングなどに放り投げてしまうという場面を見ることが多いが、「心の専門家はいらない」でも論じられているように、彼らは問題を自分に帰着させることで解決に導いてしまう。これはあくまでも対処療法であり、根本解決にはなってない。

社会交換という観点は以前から論じられていたものの、主な対処法は「個人のコミュニケーション」に限定されていた。これは必要であっても十分ではない。「自分が協力する意図」と、「自分に協力してもらえるニーズ」を、周りのみんなにわかってもらうための方策を皆で実践することである。(3章最終節から抜粋)

個人のマネジメントだけの問題ではない。
本書でも述べられているように、全員で意識を持って、組織・社会の仕組みの改善に戦略的に望む必要がある。