約束

約束 (角川文庫)

約束 (角川文庫)

石田衣良の短編集。
「傷つきやすくなった世界で」で、別の作品も読みたくなって手に取った。
この本は、ほんとじっくり読んだ。
雑音の電車で読んでいても、鳥肌立つぐらい文章に魅せられたのがわかる。


1本目の「約束」は、池田小学校の事件が題材である。

自己満足な鎮魂歌にすぎないかもしれないけど、理不尽な犯罪の被害者が、苦しみから立ち上がり、人生に帰ってくる。その過程をていねいに、しっかり書こう。そうすれば、あの悲惨なだけの事件から、なにごとかを救いだすことができるかもしれない。そうして「約束」はこんな形の作品になりました。(あとがきより)

あの事件の傷は決して消えることは無いが、この作品を通じて、真正面から向き合うことで我々の心に残るものもある。

こんなメッセージ性をこめた物語からものもあれば、日常の些細なことから感じられることをテーマにしたささやかなお話まで。あらゆる手で心を揺さぶられるのである。いわゆるべたなストーリーも、石田衣良が書くと新鮮な気持ちで読めるからすごい。

夏休みからしばらく、いろんな記事を書かせてもらう機会を頂いた代わりに、自分の拙い文章を直す作業に時間をとられて、こういった豊かな文章を読む時間を失っていた。まぁたまにはそんな状態も良いんだけど。
文庫本1冊で、文章の持つ力と読むことの楽しさが、どどっと一気に戻ってきた感じがします。

さ、次は何読もうかな。