アーキテクチャの生態系
- 作者: 濱野智史
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2008/10/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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インターネットの登場により、目まぐるしく移り変わる人々のコミュニケーションの形態や、そこから発生するコンテンツの数々。これらを「Web2.0」とかでひとくくりにまとめてしまうと、今後、さらに変わり行くであろうこの世界に流されていくだけだろう。
ブログ,2ちゃんねる,mixi,Twitterといったサービスは、どういった経緯でその形態をとり、広く使われ、基盤といえるまでに成長したのだろうか。
様々な要素が絡み合って結果があるのだろうが、この現象を読み解く一つのヒントになりうるのが、「生態系」という分析視点なのである。
まず最初に、「進化」と「進歩」いうキーワードを意識しなければならない。
「進化(evolution)」と「進歩(progress)」は厳密に区別すべき概念である。
「進歩」という言葉には、なんらかの価値観がプリセットされている。
生命の「進化」は、より優れた主が適応し、その種を存続させるためのプロセス。
インターネットは短期間にこの進化と進歩を繰り返している。
進歩的なアイデアと、進化的アイデア。
ニーズに応え、ユーザーに意識させること無く、「仕組み」として組み込んだものが生き残っていると言えるのかも知れない。
この考えをもとに、本書のキーワードになっている、「アーキテクチャ」として分析する。
「アーキテクチャ/環境管理型権力」という概念を今一度要約しておけば、その要点とは、
?任意の行為の可能性を「物理的」に封じてしまうため、ルールや価値観を被規制者の側に内面化させるプロセスを必要としない。。
?その規制(者)の存在を気づかせることなく、被規制者が「無意識」のうちに規制を働きかけることが可能という2点にまとめられます。
(p20)
基盤にまでなりえたインターネットサービスやWebサイトは、無意識のうちに人々を動かすための、明確なアーキテクチャを内在させている。
無意識を真似しても仕方が無いが、「仕組み」と人々の「行動」、「現象」は常に結びつけて見るようにしたい。
それが、アーキテクトとしての基本的な態度のように思う。
そうした意味で、本書の分析視点は、一度通して読んでおきたいものである。