「心の専門家」はいらない
「心のケア」「癒し」「カウンセリング」という言葉に、否定的なイメージを持つ人は少ないと思う。
僕も悪いイメージなんて一切無いし、そういったものが簡単に相談にいけて、手軽に利用できるようになっているのは良いことなんじゃないかと思ってました。
- 作者: 小沢牧子
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2002/03
- メディア: 新書
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『「心の専門家」はいらない』は、そういった過剰な期待というか、誤った認識を見直すきっかけを与えてくれて、さらにその先を考えさせてもらえる本でした。誰もが、一度は聞いておいたほうが良いんじゃないかと思う内容。
上に挙げた心にまつわるサービスを提供する、いわゆる「心の専門家」がどんどん増えてきている。いろいろな場所で起こる、心の問題に対処するために、急速に普及してきている。本でも紹介されているが、「心の専門家」たちの技術は、怒りや悲しみ、不安を切り取ってくれることもあるだろう。
しかし、「心」を長年扱ってきて、その業界から去った筆者は、その技術にずっと違和感を感じていたのだという。
「心の専門家」は、いろいろな問題を、様々なテクニックを駆使して、相談者自信の問題に摩り替えさせる。相談者は、「心の専門家」の導きにより、自分を変えるという考え方に辿りつくことができ、元の状態(元の世界)に復帰するのである。たしかに、相談者はもとの状態に戻れる時点で「成功」と見ていいのかもしれない。
今、売れまくっている『鏡の法則』なんか、これの典型だ。
しかし、視点を戻すと、その心の問題が起こった、根本原因は一切変わっていないことが多い。
自己完結による対処は、感情の抑制を行っているに過ぎない。
スクールカウンセラーとか、臨床心理学の専門家とか、イメージが良い。
だが、「心の専門家」がいてくれれば大丈夫っていうのはあまりにも安易な風潮だ。
「心」の定義もあやふやだが、とにかく人は、周りとのつながり、関係で成り立っている。
心の在りか、安心は、人と人のつながりにのみ存在するのである。
最後の章で筆者が残した言葉が印象的。
「相談という商品」を「いっしょに考えあう日常の営み」に戻せる道を見出していけるはずだと。
本当の解決というのは、非常に難しい。しかし、考えるのをやめてはいけない。