自分探しが止まらない

自分探しが止まらない (SB新書)

自分探しが止まらない (SB新書)

社会現象にもなっている「自分探し」の一つ一つを細部まで分析しているのは一読に値する。自分の行動や価値観を見直す良い機会になった。


ただ、読んでてずっと違和感を感じるところがある。「自分探し」の定義が広すぎるような気がするのだ。
このキーワードを使ったら最近の社会(流行)現象すべてがヒットする。「ハルマゲドン2.0としての梅田望夫」って章を見た瞬間はネタ本かと思ったぐらいだ。

この本によれば、コーチングやファシリテーションライフハックも広義の「自分探し」に当てはまる。しかし、問題視すべきは、それらの方法論に「銀の弾丸」を求める甘えた姿勢であり、社会を良くするという本質を忘れてしまうことである。境界を求めるつもりも無いが、ビジネス的に認知された言葉でカマフラージュされた精神世界や神がかり的なものに救いを求めるようなものとひとくくりにしてほしくない。改善や仕事の動機付けといった取り組みは、ビジネスなどの社会活動の基本であり、それを推進するための姿勢(「自分作り」と呼ぶべきか。)を否定してしまっては、本当に生産的な人の歩みを緩めてしまいかねない。

「成功」へのアプローチとして提供されている「自分探し」市場は大きく広がってきている。そこに救いを求めてしまう人を落とし込むような、各種自己啓発セミナーや「自分探しホイホイ」も注意すべき存在だ。そういった背景もあり、「自分探し」の定義づけは興味深い。

僕もこの本を読んだのを機に考えさせられたので、自分の中で区別する意味でもちょっとまとめてみる。

自分探し 自分の潜在的可能性を信じ、それを見つけようとする行動。それは、外的刺激によってあぶり出されると信じてしまっていて、受動的な思考が多い。スピリチュアルとか、自己啓発セミナーといわれるものはこれに分類してしまって良い。本で言うと「鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール」「3日で運がよくなる「そうじ力」 (王様文庫)」とか。面白くもなんとも無いと思うのだが、残念ながらこれらの本は売れているらしい。
自分作り 自分の知識や技術を行動の礎としている。(自分の実力以上のことはできない。)ビジョンを形成し実現するための多大な努力が必要となり、ポジティブシンキングを動機とすることが多い。「探す」のではなく、「作る」という能動的姿勢と捕らえることができる。


今後も、「自分作り」の意識を持って、勉強を続けたい。