<宗教化>する現代思想

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

個人的には、「格差社会」とかについての議論はほとんど興味は無いのに、世の中(というかマスコミ)の取り上げ方には、なんだか異常なものを感じています。
本書のタイトルが、そんな社会現象を見ていて感じていたことを、まさに言い得ていたので、手にとってみました。

その時々で何が正しいのか、どんな判断をすべきか、どのように考えるべきか。社会・経済、さらには、宗教に至るまで、人々は「真理」を求めてしまう。
筆者は、社会哲学の視点で、時代時代で議論された思想の根底を考察する。
鍵になるのが、形而上学である。
過去から現在に至るまで語られた数々の「真理」は、その前提としている存在自体が、論理的に説明し得るものでもない。形而上学的問題が内包する。
根本的に世の中の存在が説明できない以上、「右」「左」とか、「神」「物質」とか、どっちが正しいとか極端な判断は不必要と言える。

何が正しくて、何が悪いというわかりやすい構図ができれば、安心する人が多いのも事実。しかし、ほかの人も巻き込みだすと迷惑な話になる。最近のマスコミは、わかりやすい構図を作り出して、思考停止に導く例が多い気がする。