ザ・ゴール
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット,三本木亮
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/05/18
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 32人 クリック: 373回
- この商品を含むブログ (391件) を見る
先日のPMAJフォーラムでお会いしたのがきっかけで、岸良裕司さんに、会社でTOC/SCMのお話をいただいた。岸良さんのお話も面白かったので、もう一度まとめる意味で「ザ・ゴール」をじっくり読んでみた。
舞台は、赤字続きで、納期遅れも常態化した工場。
ある日、所長であるアレックス・ロゴに、このまま改善が見られなければ工場の閉鎖を検討していることが告げられる。
リソースが足りず、納期遅れはしているものの、残業などで必死で納品をこなしている。工場の生産性も、アレックスが所長になる前と比べればずいぶん良くなっている。これ以上、どうすればよいのかを悩んでいるときに、たまたま再開した知人の「ジョナ」に出会った。ジョナは、工場の問題を短時間の会話からどんどん言い当ててくる。さらに、問題の核心について、これまで見えなかったポイントを示唆してくる。
物語は、工場長アレックスが、このジョナとの会話をヒントに、工場の問題の本質を導き出し、飛躍的に工場のスループットを上げていく。
ここで、重要な役割を果たしているジョナの助言の背景にあるのがTOC(制約条件の理論)で、ザ・ゴールの伝えるメッセージである。
TOCについては、たくさんのまとまった情報があるので、そちらを参照してほしい。
(例)TOC (theory of constraints) - @IT情報マネジメント用語事典
基本的なコンセプトは、「生産工程の中にはボトルネックとなる工程があり、それが全体のスループット(生産量)を決定する。最適生産のためには工程全体のスケジュールをボトルネック工程の能力に合わせる必要があり、生産性向上のためにはボトルネック工程を重点的に改善すべきだ」というものである。“制約条件の理論”という名は生産スケジューリングの理論として、「ボトルネック工程がラインの全体スケジュールの制約条件となる」と考えたことに由来する。
一つ一つの言葉は平易で当たり前のように聞こえるが、これらを全体的な視点で、シンプルに考えられている人は実は少ない。
目的を達成するために、何を、何に、そして、どのように変えるのかを「考え」、全体最適を果たす。ある分野でしか使えないような手順書などではなく、思考のツールであると言える。
「ザ・ゴール」は、世間でよくありそうな問題と、その解決、成功を描いたものではあるが、課題分析のプロセスが具体的であり、例で挙げられている工場の話から広げて、読み手にも考えさせる工夫が織り交ぜられている。何より、ストーリーがシンプルで、展開も軽快で読みやすい。
この考え方を知るには、よくまとまったサイトを見たりするだけでなく、本書を楽しんでみることをお勧めする。