昭和59年製ソニーのラジカセをBluetoothスピーカーとして復活させました(製作ポイントまとめ)

昭和59年(36年前)にソニーから発売されたラジカセ「CFS-V5」のジャンク品をヤフオクで1000円で落札。カセットテープユニットが壊れているということで、BluetoothモジュールとPAM8403デジタルアンプ、リチウムイオンバッテリーを組み込んでBluetoothスピーカーとして復活させました。元の製品のデザインが良く、かわいいしまだまだ使えそうなオーディオ機器になりました。

動作概要の動画だけ公開していましたが、こちらに製作のポイントをまとめておきたいと思います。同じような工作をしてみたい、という方は是非参考にしていただければと思います。

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昭和59年製ソニーのラジカセをBluetoothスピーカーとして復活

 

目次

 

 

こんなふうに動きます

まずは動作概要です。


昭和59年製ソニーのラジカセをBluetoothスピーカーとして復活させた

 

もともと本体についてる「ラジオ/テープ」切り替えスイッチが電源スイッチになっていて、電源を投入すると赤色の電源LEDが点灯、あわせてBluetoothユニットが起動してテープユニットにある青色LEDが点滅します。スマホとペアリングして音楽を再生させたら、内蔵したD級アンプ「PAM8403」で増幅され、ラジカセのスピーカーから大音量の音楽を楽しむことができます。もともとの音量ボリュームもアンプに接続させていますので、音量も調節可能です。また、電池ボックスには18650リチウムイオンバッテリーを搭載しているので、コンセントに接続せずに4~5時間は音楽を楽しむことができます。カセットユニットが故障していたラジカセを、アンプ内蔵Bluetoothスピーカーとしてまだまだ現役で使えるようになりました。

 

 

 

Bluetoothスピーカーの基本的な設計情報について

基本的な設計思想・回路は、これまで100均スピーカーを使ったものや、日本酒の箱を活用したスピーカーと同じになります。ここで触れていない設計方法や、内部回路の作り方等は下記記事を御覧ください。

 

 

製作の動機、ラジカセの調達方法

いくつか Bluetoothスピーカーを作ってきて、手頃な箱と良いスピーカーユニットがあれば使えるBluetoothスピーカーが作れることがわかりました。この2つの条件が高いレベルで備わっており、携帯性にもすぐれたものが昭和に普及したラジカセであることに気づきました。ハイエンドな商品だと良いスピーカーユニットを使ってる商品もありそうです。

ハードオフのジャンク品コーナーにピッタリのものでもあればそれで良いと思いますし、ヤフオクなどで検索すればかなりの数が出てきます。基本的に使うのは箱とスピーカーユニットだけなので、カセットテープユニットやラジオ機能、ボタンが壊れてても全く問題がありません。あとは、デザインや好みのブランドで選べば良いと思います。

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ヤフオクで1000円で落札したソニーのラジカセ「CFS-V5」

今回はこのアイデアが出た日にたまたまヤフオクで出品されていた、昭和59年製のソニーのラジカセ「CFS-V5」を1000円で落札しました。完全に動作するものだと結構高値でやり取りされていますが、今回落札したものはカセットテープユニットが故障していたので安く仕入れることができました。

 

 

まずはラジカセ筐体のクリーニング

ジャンク品扱いのラジカセを安く調達してすぐに家に届いたのは良いのですが、筐体がかなり汚れていました。特に、高級感を出すはずの上部のメタリック塗装のパネルがくすんでおり、もし動かしても見栄えを損なってしまいそうだったので、まずは清掃することにします。

結果、たまたま家にあった適当な洗浄剤を含ませて拭いたらかなり綺麗になりました。

Amazonでも売ってるみたいです。 

 

 

参考に、ビフォーアフターも載せておきます。

 

  • ビフォー(洗浄剤で磨く前)

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洗浄剤で磨く前

 

  • アフター(洗浄剤で磨いたあと)

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洗浄剤で磨いたあと

あまり強力な溶剤とか使ってしまうとパネルの文字まで消えそうだったので、あとの汚れ・小傷は味として残しておくことにします。

 

清掃が終わったラジカセの写真はこちら。

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清掃が終わったラジカセ

 

ラジカセの分解と主要パーツの確認

清掃が終わったところで分解してどのように修復・改造するかを検討します。

裏面の四隅・中央のネジ、電池ボックスの中のネジ、アンテナ固定用のネジの合計7つのネジを外せば、簡単に分解が可能です。中の構造もシンプルで、再組み立ても容易でした。

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分解

ケースを開けて開いたところ。

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ラジカセを開いたところ

主要部品は次のようになっています。

 

前面スピーカー部のパーツ

まずはケース前面のスピーカー部です。

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スピーカー部

ソニー製、「3.2Ω 2W」のスピーカーユニットが使われていました。

単純に+/-を接続すれば動いてくれてそうです。

 

右スピーカーの横に、小さな基板が融接されています。

これは、前面の電源LED(赤色点灯)です。

保護抵抗150Ωをつけて、5V印加したらちゃんと光ってくれました。

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電源LEDのテスト

前面パネルはスピーカーユニット2つ(左右)と電源LED、アース線の合計7本の配線が、コネクタにつながって一本のケーブルになっています。このコネクタがメイン基板に繋がれていました。

今回は、このコネクタから外して、個別のコネクタとして追加実装したアンプや電源制御基板に接続して使いました。

 

背面メイン基板部

背面ケースには、メイン基板やカセットテープユニット、電源ユニット等が実装されています。

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ソニーラジカセ・メイン基板

今回、ラジカセの本来の基板は機能させないようにするので、メイン基板の各ユニットは次の方針で加工していきます。

 

電源基板 使わない上に重たく、スペースを取るので完全に取り外し。
ケース外部に出るAC100V入力のコネクタ部は、DC5VのACアダプタを取り付けるためのコネクタを組み込む
カセットテープユニット もともと壊れているのもあり、不要なパーツは誤動作防止と内部配線スペース確保のために取り外す。テープ回転用のモーターは重量削減になるのと、スペースも確保できるので取り外す。
ただし、ガッチリ組み込まれているカセットテープの再生・停止などのボタンは、押し心地も良くラジカセらしい部品のため、できるだけ稼働するように残しておく。
メイン基板アンプ部 パワーアンプICや周辺の電解コンデンサ、コイルが大量に実装されている。これらは、新たに取り付けるPAM8402アンプモジュールを組み込む際に干渉するのではんだを吸い取って実装部品を除去する。
ここに実装されている電解コンデンサは国産の大容量の物が多く、劣化してないものは流用もできる。
切り替えスイッチ 本体上部に出ているラジオ/テープのモード切替スイッチ。
今回は、このスイッチをそのまま電源スイッチとして利用した。
メイン基板のパターンを追うと、この切り替えスイッチが複数の導線を切り替えている回路が存在する。そのパターンの一部を利用し、スイッチを上に倒すと導通するパターンの一部を利用して電源スイッチとして利用する。その他の端子は、ラジオ・テープ回路に無駄につながらないよう、パターンをカットしておく。
メイン基板ラジオ部 ラジオ用の回路。今回は使わないので、不意につながらないようにパターンをカットしておく。

 

以下、各ユニットの改造について記載します。

 

 

ラジカセパーツの活用:スピーカーユニット

今回の改造で唯一、ちゃんと動いてほしいスピーカーユニットの確認です。

ラジカセの蓋を開けて、スピーカー配線だけを取り出し、前回作ったアンプユニットと接続してテストしてみました。

動作テストの様子はこちらです。


昭和59年発売、ソニーのラジカセ「CFS-V5」のスピーカーテスト

 

結果、スピーカーはユニットはバッチリ動いてくれていたので、目的のものが作れる目処がたちました。

 

 

ラジカセパーツの活用:電源スイッチ

本体上部に出ているラジオ/テープのモード切替スイッチをそのまま電源スイッチとして利用しました。メイン基板のパターンを追うと、この切り替えスイッチが複数の導線を切り替えている回路が存在します。そのパターンの一部を利用し、スイッチを上に倒すと導通するパターンの一部を利用して電源スイッチとして使いました。

スイッチを切り替えたときに導通しているパターンは、デジタルマルチメータで簡単に見つけることができます。

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切り替えスイッチの加工

使う場所が決まったら、その他の配線は不要な動作をしないようにパターンをカットしておきました。

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不要なパターンのカット

あとは、使用するパターンから、電源モジュールにスイッチ接続するための線をはんだ付けして引っ張り出せばOKです。

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スイッチ線の引き出し

 

最終的にはんだ付けした箇所と、導通チェックの様子です。

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スイッチ線の引き出し

 

PAM8403アンプモジュールの組み込み

スピーカーのアンプとして、PAM8403モジュール(HiLetgo 5個セットPAM8403 ミニ 5V デジタル アンプ基板 USB 電源 オーディオ アンプ [並行輸入品])を組み込みました。 このモジュールは、音量調整用の可変抵抗がついています。

この可変抵抗をもともとの音量ボリュームつまみと置き換えることで、元の機構を活かしながら音量調節機能付きアンプを実現しました。

メイン基板には、もともとのボリューム用可変抵抗が固定してある金属板があります。この金属板の穴をドリルで広げることにより、可変抵抗をつけて固定することにしました。

 

次の写真が、もともと実装されていた可変抵抗です。

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もともとのボリューム調整用可変抵抗

次の写真はこの可変抵抗を裏から見た写真です。

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ボリューム用可変抵抗の裏側

 

もともとのボリューム用可変抵抗を取り外します。

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ボリューム用可変抵抗の取り外し

あとはこの金属板にアンプの可変抵抗が入るようにドリルで穴を拡げます。

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アンプの取り付け

もともとの音量ツマミが刺さるように、アンプ用可変抵抗の軸はヤスリで削って、ちょうど刺さるように加工しています。

 

あと、次の写真にあるように、このアンプを付ける場所の下には、大型の電解コンデンサが大量に実装されています。鑑賞してしまうので、予め外しておくようにします。

 

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ラジカセメイン基板のアンプIC近くにある大量の電解コンデンサ

 

ピンぼけしてますが、アンプ組み込み後は、次のようになります。

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アンプの組み込み後

ノイズ対策用に、アンプの電源の近くには1000μFのコンデンサを付けてます。

あとは、スピーカーとの接続用コネクタ、Bluetoothモジュールと接続するオーディオコネクタをユニバーサル基板に実装してPAM8405アンプモジュールを実装しています。

 

 

ラジカセパーツの活用:カセットメカユニットへのBluetoothモジュールとバッテリー充電モジュールの組み込み

ラジカセなのでカセットが入るスロットが前面にあります。

このラジカセはカセットテープの動作が見えるように、前面がスモークパーツになっています。ここにBluetoothモジュールやバッテリー充電モジュールのLEDが表示されれば、ステータスもわかりやすく見た目もよくなります。というわけで、カセットテープが入る場所に、Bluetoothモジュールとバッテリー充電モジュールを並べて実装するようにしました。

 

実際は前面スモーク部分の裏側になりますが、カセットユニットの中央ぐらいに入るように基板を固定します。

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Bluetoothモジュール、充電モジュールの配置

前面から見たら次の写真のようになります。

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Bluetoothモジュール、充電モジュールの配置

なお、カセットテープスロットは、不意に開いてしまわないように、上の2箇所にネジ穴を空けてボルト・ナットで完全固定しています。

 動作中は、次の写真のようになり、LEDで状態がわかりやすくなります。

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Bluetoothモジュール、充電モジュールの配置

 

バッテリーユニット、電源ユニットを電池ボックスに実装する

このラジカセは乾電池でも動くように、背面に大きな電池ボックススペースがあります。もともとの用途に近いのですが、この電池ボックススペースであれば、リチウムイオンバッテリーを余裕を持って格納することができます。

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バッテリーと電源ユニットの格納

電源ユニットは、以前のスピーカーを作った際にも課題になったとおり、Bluetoothモジュールからのノイズをアンプ電源に載せないため、絶縁型DCDCコンバーターを実装し、電源を分岐しています。

 

 

ACアダプタの加工とDCジャックの取り付け

電源ユニットはAC100Vで仕様もわからず制御も難しそうだったので、まるまる取り外してDC5Vのジャックだけつけることにしました。

もともとのAC100Vのコネクタをつけるところに大穴が空いてしまうので、それを埋めてDCジャックをつけるための加工を行います。

ここに使ったのが、家庭用の配線パーツで、電線モールのコーナーに使うこの素材。

L型でサイズ的にもちょうどよく丈夫なので理想的な素材でした。

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DCジャック取り付け用のパーツ

ここに穴を空けて、DCコネクタを取り付けました。

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DCジャックの取り付け

 

背面パネルにネジ穴をあけて、ボルト・ナットで固定しています。

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DCジャックの取り付け

このDCジャックにDC5Vを供給するACアダプタは、ハードオフのジャンク品ボックスに転がってた、ソニー製のものを使いました。おそらく、PSP用です。

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ソニー製ACアダプタ

スペック的には5V2Aでちょうど良いので、コネクタをDCジャックにあわせて加工して使います。

 

ラジカセパーツの活用:コンデンサ、メカパーツの収穫

おまけです。

今回の製作は狙い通り筐体が活用でき、思ったとおりのものが作れてよかったのですが、ジャンク品をベースにするということで、最悪はスピーカーの部品取りであとは捨てても良いかな、ぐらいで考えていました。(ソニーのスピーカー2つ取れれば落札価格1000円の元は十分取れるので。)

蓋を空けてみれば、結構使えそうな部品がたくさんあり、予想以上の収穫がありました。

いくつか取り出したパーツを紹介します。

 

 

大量の大容量電解コンデンサ、抵抗、コイル

 

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大量の電解コンデンサ、インダクタ

さすが昭和のソニー製品、すべて国産コンデンサです。

ニチコン製、エルナー製、ルビコン製の大容量電解コンデンサが大量に収穫できました。

ただ、どれだけ使い込まれてるのかわからないので、キャパシタンスを測定して劣化してなさそうなものだけ残しておきました。 

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コンデンサの確認

カセットテープ駆動用モーター

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カセットテープ駆動用モーター

制御基板に9V印加したら普通に回りました。

精度も良さそうなので何かに使えそう。

 

 

テープ持ち上げ用?電磁レバー

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電磁レバー

電圧かけるとレバーが上がる小さな部品です。

とりあえず電圧かけると動きました。

何かを持ち上げる小さな機構がいるときに使えそう。

 

改造後の実装写真

一通り改造したあとの内部写真がこちらです。

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改造後の内部写真

組み上げれば完成です。

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組み上げ

もとの製品デザインも良く、メンテナンス性もよさそうです。

持ち運びもできて便利なので、家の中のいろんなところで音楽を楽しんでみたいと思います。

 

まとめ

今回はジャンク品の古いラジカセを使って作り始めましたので、最悪、スピーカーユニットはじめ音響パーツの部品取りができたら良いか、という低い目標ではじめましたが、しっかりした製品の機構もあって、とてもスムーズに、予想以上の完成度で仕上げることができました。最近の家電はモジュール化しすぎてほとんど機能改造の余地はありませんが、この時代の家電は修理・改造のベースとしても面白いと思いました。これからもジャンク品売り場で、古い機器をいろいろ調べてみたいと思います。

 

 

主要パーツリスト

最後に、今回の工作で使った主要パーツのリストをまとめておきます。

・デジタルアンプ 

 

Bluetoothレシーバーモジュール 

 

・TP4056充電モジュール 

 

・絶縁型DCDCコンバーター

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・電動ドライバー 

 

 ・18650リチウムイオンバッテリ

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・18650リチウムイオンバッテリー用ホルダー

 

・抵抗  

 

コンデンサ

  

・ユニバーサル基板

 

Bluetoothレシーバー→アンプ接続用ケーブル

  

・内部配線用コネクタ

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・ACアダプタコネクタ