知識経営のすすめ
AgileJapan2010で野中先生の講演を聞いてから随分時間が経ってしまった。
今でもプロジェクトを進める際、自分の仕事をふりかえるシーンで、あの1時間ちょっとの時間に聴いたメッセージが何度も回顧される。
自分の考えも交え、整理しておきたいのだが、まとめて時間を取って一度にまとめるような類のものでもないのだろう。機会があれば何度も立ち返り、考えてみたい。本を読んだり、ふりかえりしたり、考える機会にできるだけ書き残しておくことにする。
知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代 (ちくま新書)
- 作者: 野中郁次郎,紺野登
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1999/12/01
- メディア: 新書
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この本は、野中先生の講演を聴く前に、「知識経営」という言葉を復習するために読んだものです。
「知識経営とは」
それは知識にもとづく経営、つまり戦略・組織・事業など、経営のあらゆる側面を知識という目でとらえ実践する考え方です。
(p45)
ビジネスの対象は、「モノ」から無形資産である「知識」にシフトしている。これを体系的に考え、実践に移すための考え方がまとめられています。
実際の企業での知識経営の導入事例など、具体的な話を挙げながら、その波及効果を考察していき、さらには今後の経営のありかた、ビジョンを示している。新書200ページちょっとに、ぎゅっとそのエッセンスを詰め込んでいます。知識経営の詳細な解説というよりも、基本的な考え方と効果を端的に見るための導入書に最適です。
短いページにまとめている為か、言葉の濃度が凄い。
読みながら大量のメモがたまってしまった。
以下、個人的なメモ書きを保存のために書いておく。
全社的共通指標を強引に当てはめないこと。
IBMのプルーサック曰く、知識は「現場的で、粘々していて、状況次第」だ。
(p152)
知識のあり方、前提を端的に表している。
何でも文書化や形式化できると誤解しないようにしたい。
こうした知識のダイナミクスは、単なる形式地の共有や情報検索の仕組みといったものからは生まれません。暗黙知も含めた組織的な意識付け、組織のデザイン、すなわち「場づくり」によるところが大きいとおもわれます。
(p155)
無形のものに名前を与え、共有、資産化するアプローチ。
プロジェクトファシリテーションを通して「場づくり」の重要性をメンバーで認識していきたい。ここでも、その有効なヒントが示されている。
そして、その「場」とは。
共有された文脈ーーーあるいは知識創造や活用、知識資産記憶の基盤(プラットフォーム)になるような物理的・仮想的・心的な場所を母体とする関係性
(p161)
ここで言う「文脈」とは、英語でコンテキストにあたるもので、その場にいないとわからないような脈絡、状況、場面の次第、筋道などを示している。これが、組織・集団(仮想的なものも含めて)で形成される。
この「場」をいかに仕掛けるかが、経営の鍵になってくる。
本書を読んで感じたこと。それぞれ考えてみたい。
- 無形の知識こそが価値の源泉。Googleをはじめとする企業が体現している。
- 知識をどうビジネス、すなわち「お金」に結びつけるのか
- ベストプラクティスの共有といった、形式知に偏った「狭義のナレッジマネジメント」にとどまらず、暗黙知を育て、新たな価値を想像することが必要。
- イントラネットやデータベースといったインフラを整えるだけの狭義のナレッジマネジメントは身の回りでも横行しているように思う。
知識経営で重要なのは「仕掛け」である。仕掛けには、ファシリテーター、CKO(Chief knowledge officer)、そしてリーダーシップが機能する。
- アジリティを高める。顧客価値を高めるために、変化を受け入れ、イノベーションを創出する。「仕掛け」づくりが経営の鍵になる。
知識経営とは?SECIプロセスって何?という方のための導入として、
また、知識創造企業のまとめ・復習として、いろんな場面で活用できそうな一冊です。