サブリミナル・インパクト

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

私たちは、いろいろと買い物したり、サービスに対してお金を払ったりしているのだが、どのように判断して最終的な行動に結びつくのだろうか。
安かったからとか、品質がよかったとか、後で(適当に理由付けしたりして)論理的に語ることはできる。しかしよく考えてみると、そうした表面的な理由付けは本当に決定的なものではないことが多い。CMでの印象や、誰かが使っていたからなど外的な要因もある。でも何より、「なんとなく」というものの占める割合がかなり多いように感じていた。
本書は、そうした情動メカニズムを、心理学の観点から、深く考察したものである。

潜在認知と、認知の差

何かを購入する際、安いとか、品質が良いとかの表面的理由は、実は、購入の本当の裏付けで無いことも多い。

  • 第1に論理レベル
    • 安いとか、品質が良いとか
  • 第2に意味ネットワーク
    • 連想記憶、イメージ戦略などがこれにあたる。)
  • 第3に、記憶そのものの効果。
    • もっとプリミティブな、生物学的メカニズム

下のレベルほど、意識されないが、非常に行動を決定付ける上で、ウェイトが高いものである。現代のコマーシャリズムは、こうした潜在意識に踏み込んでくるものを考慮して作られているものもある。

我々は、本当に自分で選んでいるのか?

現代は、商品も、サービスに溢れているように見えるが、実は、選択行動自体をかなり制御されているとも考えられる。潜在意識まで訴えてくる現代の広告、マーケティングの波に晒された我々は、本当に選択の自由を享受できているといえるのだろうか。最終章こうした考察に加えて、本当の創造性とは何か、ということに踏み込んでいる。
考えさせられる点も多かった。

感想

本書もそうだが、心理学の実験とか論理展開というのは、その前提条件や仮説がいまいち腑に落ちない(どうしてその実験をしたのかという理論的背景をよく知らないのもあるが。)ことが多いく、なんだかもやもやする。すっきりしないながらも、テーマの取り上げ方、話の展開としては面白かった。
人がどういったことに興味を持つのか、マーケティングや、企画はもちろん、プレゼンを考える上でも、新しい視点を考えるきっかけにはなるだろう。
世間の情動を、なんとなく経験則で語っていることは多いが、こうしてじっくり考え、まとめられたものを読むことは、自分自身の思考の整理にもなった。